【図鑑と知育】好奇心が子どもを賢く育てる
今回は、図鑑と子ども(の成長)について考えてみたいと思います。
1.図鑑は本当に知育本となるのか?
1-1.図鑑を読み始めてからの子どもの変化
1-2.図鑑を譲ってくれた甥っ子の“今”
2.失敗しない図鑑の選び方と買ってあげるタイミング
2-1.図鑑の“買い時”と選び方
2-2.図鑑はプレゼントにもぴったり!
3.図鑑は文字や言葉の学習に役立つのか?
3-1.子どもが賢く育つキーワードは“好奇心”
3-2.絵本と図鑑は何が違う?
4.『賢い子ども』と『好奇心』
4-1.子どもが賢く育つキーワードは“好奇心”
4-2.ドーパミンサイクルとは何か?
4-2.ドーパミンサイクルの形成のチャンスはいろいろある!
5.図鑑の種類
5-1.従来型の図鑑
5-2.最新の図鑑はその見せ方もいろいろある!
6.図鑑を身近に… 置く場所を考えよう!
7.まとめ
1.図鑑は本当に知育本となるのか?
一般的に図鑑は
『子どもの言葉・漢字の発育や知識にとって良い知育本である』
というようなことが言われていますが、本当はどうなのでしょうか?値段も絵本と違ってそこそこしますし、私たち親は様々な損得勘定を考えてしまいがちです。
『図鑑は欲しいけど、どんな図鑑が自分の子どもに合っているのかわからない!』
『確かにたくさん写真とかイラスト載ってて知育に役立ちそうだけど、値段もそこそこするし、買ってみて全然読まなかったら損した気分になるし…』
考えがぐるぐる回ってなかなか納得のいく答えを見出すこともできずにいる方も多いのではないでしょうか?
でも私は、図鑑というツールが子どもの成長を後押ししていくのを目の当たりにした結果、図鑑が身近にある生活は子どもにとってマイナスの要因は一切なく、↑のような不安もただの思い過ごしだったことを思い知りました。
図鑑は知育そのもの、子どもにとってはプラスの要因しかないのです。
1-1.図鑑を読み始めてからの子どもの変化
ある時私は、姉から『じどうしゃ図鑑』をもらいました。姉の子ども(甥っ子)の愛読書でしたが、甥っ子もすでに中学生、低学年までは愛用していたそうですが、さすがにもういらないということでした。
それから半年経って、もうすぐ4歳になる次男がその図鑑に“どはまり”しました。
毎日寝る前の『読み聞かせ時間』には絵本に変わって図鑑を持ってくるようになり、最初のページから最後のページまで『読み聞かせ』をせがむ日々が続いたのです(親にとってはある意味地獄の日々ですが…)。
そしてそのうち、図鑑の各ページの車の名前と役割を詳細に覚えてしまい、例えば『これは病気の人を助けるためのスーパーアンビュランス(Super Ambulance)?』と聞いてくるようになったのです。
それ以外にも、街で走っているバスを見ると『あれ市バス!』と興奮したり、消防署の前を通り過ぎた時には『ハシゴ車がいる!』といった感じで、図鑑に載っている車を見つけるたびに大喜びするようになりました。
こうして、じどうしゃ図鑑の影響は日常生活の中にどんどんと溢れていくことになりました。
次男は一般的な他の子どもよりも言葉の発育が遅く、そのため役所主催の発育教室にも通っていたこともあります。幼稚園に入ってからも『あんまり言葉が出てこないな…』と心配していたのですが、親の心配なんてなんのその!図鑑を手にしてからは、幼稚園という新しい生活が始まったのと重なったのも影響があるとは思いますが、みるみる言葉が溢れていったのです。
1-2.図鑑を譲ってくれた甥っ子の”今”
ちなみに図鑑を譲ってくれた中学生の甥っ子は、特別自動車が好きというわけではありません。今は、自分の部屋を水族館のようにしてたくさんの生き物を飼っています。淡水魚、海水魚の他にも『○○トカゲ』『〇〇ガエル』などの爬虫類や両生類、ザリガニを繁殖させたりもしています。当然生き物に関する知識はすでに一般的な大人の域を超えており、初めて部屋を見せてもらった時の私は『すげぇ…』と絶句しました。
成績に関してですが、正直なところ控えめに見てもかなり優秀だと思います。
通知表の合計は40を超えており(もし全て5なら総合計は45、ただ彼は体育だけが3(笑))、でも別に生き物オタクという印象はまるでなく、友人とのコミュニケーションも何の問題ありません。私は甥っ子の保育園の送り迎えもしていたので小さい時から良く知っていますが、いつも友達と楽しく遊んでいる様子でしたしそれは今も変わっていません。変化といえば、小学校、中学校では学級委員や生徒会ということにも意欲的になっており… 甥っ子ながら感心するばかりです。
こうして私は、私自身の子ども(幼稚園児)と現在は中学生の甥っ子という二人の子どもの成長と変化の様子を、身近に垣間見る良い機会に恵まれました。
もちろん子どもの成長には様々な因子があり一概に述べることはできませんが、そこに『図鑑』という存在はどれくらい関わっているんだろう…?
とても気になり、多くの専門家も指摘する点について考えてみたいと思いました。
2.失敗しない図鑑の選び方と買ってあげるタイミング
図鑑を選ぶ時、例えば親の視点から『これを見ると賢くなるのかな?』とか、『これについて詳しく知ってほしいな!』と思う事はあるかもしれません。でも、ちょっと待ってください!
確かにそういう選び方も否定はしませんが、もし子どもがその図鑑のテーマに全く興味が無い場合は、↑の不安(買ってもまったく読んでくれない)ことにつながりかねません。例えば、虫が嫌いだと言っている子どもに対して虫の顔が大写しになった写真がたくさん載っている図鑑はある意味嫌がらせですよね(笑)
ここでは、失敗しない図鑑の選び方のコツをお伝えします!
2-1.図鑑の“買い時”と選び方
子どもの変化を目の当たりにした私は、別の機会に姉と会った時に『どんなタイミングで図鑑を買った?』と聞きました。すると姉は
『子どもの興味が乗り物だった時に“これだ”と思って買ったたけだよー』
『別に何の図鑑でもよかったの。それがたまたま車だっただけだよー』
とあっさり答えました。その時の私は姉の言葉に『なるほど…』としか言えませんでしたが、これはズバリ正解なんです。
冒頭でも書いたように図鑑選びと買うタイミングについては、子どもが『これに興味を持ってるみたいだな』と思った時に『興味の対象の図鑑』を買ってあげればいいんです。
でも、買ってすぐに図鑑に食いつくとは限りません。実際、次男の場合もじどうしゃ図鑑をもらって興味を持ち出したのは半年経ってからです。
また、子どもが図鑑に興味を持ち出して日常的に話題を持ち出すような変化が見られたら、同じテーマの別の図鑑を買ってあげるとさらに興味が湧いたり、図鑑による説明の違いなどを発見するなど読み比べを楽しめるようになるかもしれません。
2-2.図鑑はプレゼントにもぴったり!
子どもが興味を持っているテーマの図鑑は、誕生日やクリスマスのプレゼントにぴったりです。もらった子どもはとても喜びます。
でも注意したいのは、場合によってはおもちゃなどと比べるとインパクトにおいて見劣りする場合もあるので、事前に子どもの気持ちをリサーチしておくことが重要です。
また、図鑑に関してはどうしても親・大人の『○○をよく知ってほしい』みたいな気持ちが先走りすることもありますが、プレゼントは本人が本当に欲しいものを贈るべきなので、子どもの興味のあるものが何なのか、それを優先してあげてください。
でも、私の母親の例ですが、『自分がこれを買ってあげたい』という気持ちが強いようで、親からしたら『もう勘弁してよ…』というようなものを子どもにプレゼントする傾向があります。
ある時『これを読んでほしいから!』と言って『からだのしくみ』という図鑑を長男に買ってきた時も、親としては内心『いやいや、興味ないでしょ…』と思ったのですが、少し時間をおいてから、長男はその図鑑に興味を持ち出して食い入るように読むようになりました(笑)
これは大人の都合で買ったものでも結果的に良かった一例ですが、今の図鑑は子どもにとって『普通の読み物』としても愉しめる工夫がたくさん凝らしてあるものがたくさんあり、それについては6.図鑑の種類で紹介します。
3.図鑑は文字や言葉の学習に役立つのか?
↑の『図鑑を読み始めてからの子どもの変化』で、4歳の子どもが図鑑を通して言葉を覚えていき、日常生活の中にも言葉が溢れていった経緯について紹介しましたが、これは図鑑と文字・言葉の習得の典型的な一例だと思います。
ここでは、どうして図鑑が文字や言葉の習得にとって役立つのかを紹介します。
3-1.図鑑を読むと文字や言葉の習得が早くなる
子どもは読み物を読んでもらうことで、自然に文字や言葉を覚えていきます。文字や言葉の習得におけるステップは、一般的に以下のようになります。
まず幼少期の子どもの場合、当たり前ですがまだ文字を知りませんので、主に親など大人による絵本の『読み聞かせ』が文字や言葉を覚えるスタート地点となります。
この場合、絵本の中で擬音語や擬態語などに使われている文字を、音と一緒に形として自然に覚えていき、それが文字の習得や語彙力増加のきっかけとなります。
次に、すでに平仮名やカタカナが読める子どもの場合ですが、多くの子ども向けの出版物は見出しやタイトルはもちろん、本文にもルビがふってあるものがほとんどです。ルビがふってあれば読むことができるため、ルビを読んでいるうちに、知らず知らずの間に一緒に書かれている漢字も自然に覚えてしまうというわけです。
読める文字が多くなると、より自分で読むことのできる内容も多くなり、自然と『読解力』が身につくとともに語彙力もついていきます。読んで得た語彙力は、そのうち日常会話にも登場し始めて、それは表現力として子どもの成長を支え始めます。
ここで、少し長男の話を紹介したいと思います。
長男が当時5歳の頃だったと思いますが、何かのご褒美で、初めて子ども雑誌(てれびくん、だったかな?)を買ってあげたことがありました。
大好きな仮面ライダーやウルトラマンのイラスト・写真がたくさん載っている幼児雑誌を毎日のように食い入るように見ており、絵本と同じような『読み聞かせ』も毎日のようにしていました。
そんなある日、長男はテレビで流れたCMの文字を突然『声に出して読みだした』のです。あの時は衝撃を受けました。だって、親の知らない間に子どもが相当数の文字(ほとんどの平仮名とカタカナの一部)を学習していたのですから!それまで雑誌を見ていたのは、写真やイラストだけではなかったのだと思い知りました。
ここで気になるのは、絵本や雑誌でも同じ知育的な効果が得られるのであれば、図鑑は必要ないんじゃないの?という疑問です。それではいったい、絵本や雑誌と図鑑の違いとは何なのでしょうか?
3-2.絵本と図鑑は何が違う?
絵本(や雑誌)と図鑑には、ある決定的な違いがあります。
それは、絵本や幼児向けの雑誌がどちらかというと〝バーチャル”な存在なのに対して、図鑑は子どもにとってその内容(バーチャル)と現実(リアル)を結び付けやすく、それにより子どもの好奇心をより掻き立てやすいという点です。
ちょっとわかりにくいかもしれませんので、具体的に見ていきましょう。
例えば私の次男の場合、『じどうしゃ図鑑』を読んでから外に出るとすぐに『本物の自動車』に出会う事ができます。そこには本の中にだけあったはずの車がびゅんびゅん走っていて、知っている車を見つけると『あれは救急車だ!』と発見と驚き、歓びの瞬間が訪れるのです。
虫や星の図鑑だって同じで、図鑑で見た世界はすぐ身近に広がっていて、例えばアリやダンゴ虫なんかはすぐ手を触れられる範囲に歩いていたりします。こうして、リアル(現実)とバーチャル(本の世界)が子どもの中でがっしりと結び付きます。
バーチャルとリアルが結びつくことは、子どもにとっては衝撃そのものでしかありません。絵本や雑誌では、多くの場合『その中だけ』で物語や世界は完結してしまい、なかなか現実に出会う機会がありませんが、図鑑の場合は、掲載してある『世界』がすぐ身近な現実世界にどんどん現れてきます。
だから次男は、『バスがいる!』『ハシゴ車がいる!』と大興奮したのです。子どもにとってそれまでは『(絵)本の中だけだったバーチャル世界』を身近にリアルに体験できるんですから、興奮して当たり前ですよね!
それにより、子どもの心には『他にはどんな自動車がいるんんだろう?』『もっと自動車を見つけたい!』という、発見 ⇒ 興味・好奇心 ⇒ さらなる探索、という循環が起こるのです。
4.『賢い子ども』と『好奇心』
4-1.子どもが賢く育つキーワードは“好奇心”
ここまで図鑑と子どもの成長について紹介してきましたが、いずれも同じキーワードが登場しているのに気づきましたか?
そうです、『好奇心』というキーワードです。
『図鑑を買うと子どもに良い影響があるのでは?』という話は、大人の表現で言い換えれば『賢い子どもに育つのに図鑑が役立つのでは?』となります。親なら誰もが自分の子どもに賢く育ってもらいたいものですが、ここで一つ疑問が生じます。
そもそも『賢い子ども』とは何でしょうか?
グーグルで検索すると、それこそおもしろいように『賢い子どもは好奇心旺盛な子ども』だという同じ答えばかりにたどり着きます。
これはただの偶然ではなく、近年の教育学者、脳科学者や経済学者すらも、口をそろえたように『賢い子ども』と『好奇心』をセットに語っているのです。それはどうしてか?
すでに脳科学の分野からも実証されていることなのですが、知的好奇心が旺盛な子どもは、テストの点数のためではなく、興味を持った対象について自分からおもしろがって調べたり、取り組んだりします。知識はどんどん集積されていきますし、そもそも努力とも思わずに夢中になって『勉強』をする“勉強好き”な子どもに育つため、結果としてテストの点数は高得点となることが多く、それを多くの大人は一般的に『成績優秀な子ども(=『賢い子ども)』と言うのではないでしょうか?。
賢い子どもとはつまり、『勉強が好きな子ども』のことで、勉強が好きなのは『好奇心が旺盛』な子どもだから、と言い換えることができます。
ポイントは、好奇心を持つと子どもは自分から進んで物事を探索し始める、ということです。脳科学の分野においても、好奇心が賢い脳を育てるのに役立つとされる研究結果が報告されており、好奇心と脳の発育の関係は最近とても盛んになっています。これをざっくりと説明すると以下のようになります。
4-2.ドーパミンサイクルとは何か?
脳の80%は3~5歳頃までにその基礎が完成するとされていますが、好奇心と脳の関係を語る上でキーワードになるのが『ドーパミンサイクル』という言葉です。
ドーパミンは脳内の神経伝達物質で、ドーパミンが出れば出るほど、私たち人間は物事に対する意欲が高まり、何事にも積極的に取り組めるようになります。言い方を変えれば、ドーパミンが出やすい『脳作り』ができれば、人間は様々な事に意欲的・積極的に取り組めるようになります。これがいわゆる『ドーパミンサイクル』というものです。
例えば、幼い子どもが絵を描いて親に褒められます。すると子どもは達成感を感じると同時に、さらに高度な達成感(例えば『もっと絵を描こう!』)を求め、絵を描くことに意欲的に取り組むことになります。この時に作用している物質がドーパミンであり、ドーパミンが分泌される環境が多いと『ドーパミンが出やすい(=意欲的・積極的に物事に取り組むことができる)』ように脳が形成されていくのです。これがいわゆる『ドーパミンサイクルを作る』ということになります。
ところが脳は5歳頃までにその基礎を完成させてしまうため、大人になってからドーパミンサイクルを活性化させようとしてもうまくいきません。
逆に、幼少期にしっかりと、何度も何度もドーパミンサイクルを経験した脳は、成長してからもチャレンジする(=意欲的・積極的に取り組む事)ことが楽しさ、うれしさにつながることを知っているため、さらなる達成感を求めて飽くなき探求心(=旺盛な好奇心)を持ちます。
図鑑が知育に役立つと言われる所以がまさにそこで、『リアル』と『バーチャル』を結びつけることで楽しみや喜びを得た子どもは、さらなる楽しみや喜びを求めて次の探索(=チャレンジ)に進もうとします。
つまり図鑑は、好奇心を持った子どもにとってはドーパミンサイクルを生み出すのに最適なツールの一つであるからこそ、知育に役立つと言われているのです。
4-3.ドーパミンサイクルの形成のチャンスはいろいろある!
本稿では図鑑にクローズアップしているため『見て知る』ことでの『知的好奇心や達成感』に重きを置きがちですが、ドーパミンサイクルは主に『初めてのドキドキ・ワクワク』体験が多いほど形成されていくことを追記しておきます。
図鑑におけるリアルとバーチャルをつなぐ『発見』については紹介しましたが、例えばアスレチックで『上まで登れた!』という体験も達成感を得ることができますし、『補助輪なしの自転車に乗れた』ときのワクワクドキドキ感は格別です。また、『初めて川遊びをした!』というのも立派なチャレンジであると同時に素晴らしいワクワクドキドキ体験となります。
ただ、これらの『ドキドキ・ワクワク体験』には子どもに対する親の接し方が大切です。危険を伴う体験はもちろんあり得ませんが、始めからハードルの高いチャレンジや経験を強要するのではなく『できるか、できないか!』というぎりぎりの体験を、親がしっかりと見守りをしている環境でさせてあげたりすることが重要です。
『これまで上まで登れなかった綱が登れた!』
『初めて水に顔をつけることができた!』
こんな日常の一コマで、子どもたちをしっかりと褒めて達成感を満喫させてあげれば、ドーパミンサイクルは自然に形成されていきます。
5.図鑑の種類
ここまで、図鑑が子どもに与える影響やその理由、子どもの好奇心と『勉強好き』の関係を紹介してきましたが、最近の図鑑は従来の図鑑とは異なる進化を遂げています。ここでは、従来型の図鑑と最近の新しい図鑑について紹介していきます。
5-1.従来型の図鑑
一昔前までは、図鑑といえば写真と説明が羅列されているタイプのものがほとんどだったと思います。もちろん今でも従来型の図鑑を多く見かけますし、それが悪いということは全くありません。むしろ、純粋に調べたい、辞書代わりにもなるという意味ではそちらの方がよいことだってあります。
5-2.最新の図鑑はその見せ方もいろいろある!
最近では、本当にいろいろな図鑑を見かけます。
まず種類ですが、これまでは主に図鑑の対象物の種類について重きを置かれてた感があります。例えは昆虫図鑑なら昆虫の種類(分類)、自動車図鑑なら車の種類、といった具合です。
でも今はそれ以外に、何らかの目的に沿って内容が構成されている『テーマ型』とも呼べる図鑑が多くあります。例えば『昆虫の秘密』『宇宙の秘密』など、『○○のひみつ』をテーマにした図鑑などです。
さらに見せ方も、これまでのように写真や説明の羅列ではなく、仕掛け絵本のようにめくる、触るなどの要素を加えて『読むことを楽しむ』図鑑もたくさん販売されています。そのような『テーマ型』『仕掛け絵本のような図鑑』の一例として、私の祖母が子どもに買ってくれた『からだのしくみ』図鑑というものを紹介します。
この図鑑は、身体の各部位ごとにその働きなどが紹介されていますが、おもしろいのはその見せ方です。イラスト部分が二重・三重の構造になっており、めくってみるとその部位の詳細な説明やビフォー・アフターのようなイラストが出てきます。
この見せ方は仕掛け絵本そのものといえます。6歳の長男は、はじめはめくることに楽しさを感じていたようですがしだいにその内容にも興味を持ち出したようで、例えば食事中に『胃の中には食べたものが入っているの?』と聞いたりするようになってきました。
この図鑑を読んでいる子どもをみていると、そもそも『図鑑』というよりは『絵本』に近いイメージで読んでいる様子がうかがえます。つまり、従来型の図鑑より『読む側』のハードルが下がっていて読みやすく、でも内容は本当にしっかり充実しています。
6.図鑑を身近に… 図鑑の置き場所を考えよう!
あなたは図鑑をどこに置いていますか?またはどこに置いておく予定ですか?
実は、図鑑の置き場所も重要な要素です。図鑑を絵本と区別して本棚の奥やリビングとは別の部屋に置いているとしたら、それは大きな間違いです。
ちなみに我が家では、絵本と一緒に図鑑が並べられていて、子どもはいつでも図鑑を持ち出せる状況にあります。
図鑑は、大人の価値観的に『まだ早いから』とかではなく、『身近においておく』のが正解です。そうすれば子どもはいつも取り出せますし、親も突然難しい質問をしてきたこ子どもに、すぐに図鑑を取り出して
『これはね…』
と説明する事ができます。図鑑は、とにかく身近に置いておくことがとても大切ですよ!
7.まとめ
今回は図鑑と子供の成長の因果関係について紹介しました。子どもの発育において、図鑑がどれだけ役に立つ知育素材であるのかということが、脳科学という側面においても多少は理解をしていただけたなら嬉しく思います。
最後になりましたが、私と私の姉について紹介したいと思います。
7-1.私の姉について
姉は、どちらかというと天然が入っています(笑) 時々見当違いの事であたふたしている様子もありますが、なぜか知育・教育に関しては理屈を通り越して
『なるほど…』
と思ってしまうことが多々あります。
私の姉は障害児教育を専門に働いており、先天性の障害を持つ子どもたちと普段から接しています。そして、アスペルガー症候群や自閉症の子どもは特に図鑑を好む傾向があるという話は聞いたことがある程度で、私自身は障害児教育については特に専門教育を受けたこともありません。
姉に具体的な話を掘り下げて聞いたことはほとんどありませんが、障害を持った子どもたちと日々接する中で、図鑑と子どもの成長にとってとても重要な因果関係を、姉は見出しているのかもしれません。
そしてもう一つ、発育や成長を語るうえでは、健常者も障害者もありません。マジョリティーとマイノリティーだけで優越や差異を語ることはナンセンスだと私は思います。ただ両者にとって、発育段階にあった最適な教育方法や接し方が存在する、ということは理解できます。
ただ一つ確かなのは、障害の有無にかかわらず子供にとって『図鑑』は有効な知育ツールであるこということです。
7-2.私の図鑑体験
私は幼い頃、昆虫が大好きでした。昆虫図鑑は親にせがんで4冊買ってもらいました。甲虫に強い図鑑、チョウに強い図鑑、総合的に多くの写真が掲載されている図鑑など、一緒に本屋に行って、自分で選ばせてもらいました。
そんな私は、毎年夏になると家でアゲハ蝶の幼虫を育ててサナギからチョウに孵すのを楽しみにしていました。理由はわかりませんが、メタモルフォーゼに神秘を覚えていた手塚治虫さんと同じ感覚であったと思いたいです(笑)。
ある夏、毎年の恒例行事としてアゲハチョウの幼虫を育てていたのですが、そのうちの1匹だけがとても巨大で、毎日不思議に思っていました。他の幼虫とは2倍以上の体格差がありました。
やがてその幼虫はサナギになり、ある朝、漆黒の羽を持つクロアゲハへその姿を変えていた時の感動は、40歳を過ぎた今でも忘れていません。羽は見る角度によっては光の加減で7色を帯び、大きさは他のアゲハチョウより1.5倍以上ありました。せまい虫かごの中で羽を乾かしていたその姿は、しっかりと幼い私の心に刻まれました。
そして私はその朝、同じように感動を共有した母と一緒に、虫かごからクロアゲハが蒼い空の広がる世界へ飛び立つのを眺めていたのを昨日のことのように鮮明に覚えています。
私がドイツへ留学しようと決意したことや、その後の経験を重ねて今日まで至っている経緯は全て、幼い頃から積み上げてきた経験の結果なのかもしれません。ヒトの成長において、各成長段階における決断の根底にあるモノなど、歳をとればとるほど本人すら正確に推し量ることはできませんが、それまでの経験が何がしかの影響を与えていることは否定できない事実であると思っています。
ただ、特に幼少期に積み上げた経験は、良くも悪くもその後の人生に大きく影響することだけは経験則から推し量ることができます。でも、実際に子どもが生まれ、ドーパミンサイクルという脳の働きを知り、自分の経験と重ね合わせ、子どもの発育に良い成影響を及ぼすのかなとは思ったものの、脳科学者ほどの確信を持つこともできません。なぜなら、ヒトはそれぞれに違うのは当たり前で、性格や嗜好も10人十色だからです。
実際、長男は私とは違い虫が大嫌いですが、次男は虫も含めて生き物が大好きです。同じ人生はひとつしてないのだなと思います。だからこそ、親であるからこそ『自分がこうだから!』という価値観の押しつけは百害あって一利無しと思っています。
でも、一つだけ価値観の押しつけをしたいことがあります。
それは、私にとっての鮮烈すぎるほどの思い出となった蒼い空へ飛び立ったアゲハチョウと同じような感動体験を、子どもたちにさせてあげることができたらいいなということです。そしてそのきっかけとなった図鑑が、子どもの成長にとって良いツールとなってくれることを願うばかりです。あんなにきらびやかに宙を舞う姿は、子どもの経験と成長にとって悪い影響を与えるとは思えませんから!
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